マイクロナノ工学研究室では、材料そのものを変えることなく、マイクロ・ナノスケールの「形」を設計するだけで、 力学・光・熱・流体の応答を自然界にない水準まで制御する「機能を創出する微細構造」の研究に取り組んでいます。 独自開発の3次元加工技術「3次元リソグラフィ」を基盤に、メタマテリアル・バイオミメティクス・機能性表面テクスチャの 3本柱で、IoT・バイオ・光分野の実用デバイス創出を目指します。
- Mission:ミクロの革新でマクロの未来を創る
- Vision:微細構造をオンデマンドで、誰もが使える未来へ
- Value:ものづくりの一連の流れを実践
基盤技術:3次元リソグラフィ

半導体製造技術(2次元・数十nm〜数μmオーダー)と機械加工・精密加工(3次元・100μm以上)の間には、長らく技術的な空白領域がありました。研究室が独自に開発した「3次元リソグラフィ」は、この空白を埋め、μmオーダーの精度で3次元的な微細構造をハイスループット・大面積に加工することを可能にした加工技術です(日本特許第5458241号、US Patent 8871433、2015年文部科学大臣表彰・若手科学者賞受賞)。紫外光の屈折現象(スネルの法則)を利用することで、傾斜・湾曲した任意の3次元形状を、半導体プロセスに匹敵する精度とスループットで作り出すことができます。
加工面積は最大Φ100mm程度、膜厚は数μm〜数mm、アスペクト比は最大10程度まで対応可能で、3Dプリンタを用いたモールディング法と組み合わせることで、より大きな構造の作製にも展開しています。
3つの研究の柱
微細加工(リソグラフィ)とシミュレーション(有限要素解析)を両輪として、材料そのものを変えることなく、マイクロ・ナノスケールの「形」を設計するだけで機能を創出するという考え方のもと、「メタマテリアル」「バイオミメティクス」「機能性表面テクスチャ」の3つを研究の柱としています。
連続体力学において、構成材料の固有物性ではなく、内部に設計された空間的構造の幾何学(トポロジー)によって力学応答をプログラムする技術です。負のポアソン比、負の剛性・多安定性、極端な弾性異方性などを実現し、振動発電デバイスや伸縮性フレキシブル基板、単一細胞操作用マイクロアレイなどに応用しています。 地球上で38億年にわたり自然淘汰を経て磨き上げられてきた生物の構造・機能・製造システムを分析し、新素材開発や次世代ものづくりに応用します。蓮の葉の超撥水構造、タコの吸盤、ヒトの内耳の音響構造などを模倣し、表面濡れ性の制御やMEMS振動センサなどを開発しています。 材料の化学組成を変えずに、表面のマイクロ・ナノの幾何学的な形だけを変えることで、熱・光・流体・化学反応を10〜100倍の効率でコントロールするという考え方です。比表面積の増大、表面摩擦の増減、光特性の高機能化などの物理効果を活用し、再帰性反射材や摩擦発電デバイス、微小流体チップ製造、バイオチップ開発などに応用しています。
MECHANICAL METAMATERIAL
メタマテリアル
(自然界にはない特性)
BIOMIMETICS
バイオミメティクス
(生物模倣)
FUNCTIONAL TEXTURE
機能性テクスチャ
(表面・界面機能制御)
応用分野
これらの技術は、ウエアラブル・フレキシブル・スケーラブル・エディブル(可食)・バイオコンパチブルといった キーワードのもと、IoT/バイオ/光の分野に応用されています。自己発電型IoTセンサ、単一細胞分析デバイス、 ヒト聴覚模倣振動センサ、生体模倣システム(MPS/臓器チップ)、燃料電池電極など、多岐にわたる研究テーマに 取り組んでいます。
【わずかな振動で自家発電する次世代IoTデバイス】
加工技術の応用例の一つは、IoT(Internet of Things)向け超小型振動発電機の研究です。
老人や子供の動きを電池レスで見守る無線ネットワークが期待されています。生活弱者が充電を気にせずともセンサで位置を把握する発信器(ビーコン)として、発電機が必要です。3次元リソグラフィ法で複雑形状を作製し、ヒトのわずかな動作から効率良く発電する超小型発電機の開発を行っています。
4コマ漫画は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)における発電デバイスの重要性を表現しています。人体の動作程度で発電する超小型発電機(エナジーハーベスタ)により、あたかも人間が発電機になるような研究です。
この研究の面白いところは、小さな構造物の固有振動数を低くする構造の検討にあります。効率良く発電するためには、デバイスの固有振動数と環境(人体)の主となる振動数が一致することが必要です。ここで、一般的に構造物が持つ固有振動数は、大きい構造物ほど低く、小さい構造物ほど高くなります。人の身につけられるように、小型化したいのですが、小さくすると固有振動数が高くなってしまいます。これを、3次元リソグラフィ法で作った特殊な構造で、固有振動数が低い構造を作り出しています。
【老化・ガン化に関わる染色体の長さを測る】
人体を構成する推定37兆個の細胞ひとつひとつに細胞核があり、核の中には染色体(DNA遺伝子)が格納されています。細胞一つあたりに格納されている染色体の束は23対(46本)あり、一本の紐状に延ばしてつなげると、メートル級の長さがあります。DNAの2重らせん構造の直径は約2.4nmですから、非常に細くて、長いひもが、一つ一つの細胞に格納されていることになります。染色体の中の遺伝子配列が変わって変異することがガンなどの病気の一因であることが分かっています。その入れ替わりや長さの変化が目で見れたら良いのですが、残念ながら、糸まり構造とも呼ばれるように細い長い糸がこんがらがっているので、見ることができません。本研究では、マイクロマシンを使って、染色体を簡単に引き延ばし、染色体の構造をこわさずに、染色体の特徴的な配列や長さを分析しようとする研究です。
老化・ガン化に関係するといわれるヒト染色体の長さを可視化して診断することができるようになります。3次元リソグラフィ法で複雑形状を作製し、遠心力を用いた簡単操作で染色体診断ができます。
メタマテリアル(自然界にはない特性)
メカニカルメタマテリアルとは、連続体力学において、構成材料の固有物性ではなく、内部に設計された空間的構造の幾何学(トポロジー)によって実効的な力学応答を設計・プログラムされた人工構造体のことです。目に見えないセルを集合することで応答が変わり、セルの変形・回転・座屈の応用により、極限的な弾性特性を数理的にデザインします。負のポアソン比(オーセチック特性)、負の剛性・多安定性(エネルギー散逸)、極端弾性・剛性の異方性という3つの力学物性を中心に、以下のテーマに取り組んでいます。
ポアソン比の制御(3次元光造形メタマテリアル)
従来の平板材料は引っ張ると直交方向に縮む(正のポアソン比)ため、応力が局所的に集中し耐久性が低下しやすいという課題があります。3Dリソグラフィ(UV-PDMS)により、蝶ネクタイ状のリエントラント構造をパターン形成し、梁の傾斜角(細線10°/太線30°)を変えることで負・ゼロポアソン比を作り分けました。一軸引張試験により、平板は伸長方向に垂直な方向へ収縮する一方、メタマテリアルはわずかに拡張し、ポアソン比を正から負まで連続制御できることを実証しています。
・Materials & Design, Vol.252, ID:113805, 2025.
・IEEJ Transactions on Sensors and Micromachines, Vol.144, No.1, pp.17-22, 2024.
・Sensors and Materials, Vol.35, pp.1995-2011, 2023.
・日本機械学会 若手優秀講演表彰 2025年12月15日(指導学生:武政昇弥)
・日本機械学会 若手優秀講演フェロー賞 2023年11月22日(指導学生:伊藤陸)
ヒト歩行を用いた圧電型振動発電デバイス
IoT機器のバッテリレス化に向け環境振動発電が注目されますが、小型化すると共振周波数が高くなり、歩行など低周波の振動源と合わなくなる問題があります。圧電層(PVDF)と弾性層(SU-8 or SUS)からなる片持ち梁の弾性層形状を、平板(Flat)と負のポアソン比を有するメタマテリアル構造などを比較したところ、メタマテリアル構造により剛性が低下して共振周波数が低共振化し、最大発電量が向上しました。
・Mechanical Engineering Journal, Vol.12, ID:25-00100, 2025.
・Sensors and Actuators A: Physical, Vol.318, 112488, 2021.
・Science and Technology of Advanced Materials, Vol.19, No.1, pp.660-668, 2018.
・Journal of Physics: Conference Series, Vol.1052, 012021, Jul. 2018.
・Journal of Physics: Conference Series, Vol.1052, 012103, Jul. 2018.
・日本機械学会 若手優秀講演表彰 2024年12月16日(指導学生:長谷川峻大)
・日本機械学会関東支部群馬ブロック ビジネスフロンティア賞 2023年(指導学生:森下浩多)
・日本機械学会 若手優秀講演フェロー賞 2023年11月22日(指導学生:長谷川峻大)
・日本機械学会関東支部群馬ブロック ビジネスフロンティア賞 2022年(指導学生:森下浩多)
・日本機械学会 若手優秀講演フェロー賞 2021年(指導学生:栗山頌明)
・日本機械学会 第9回マイクロ・ナノ工学シンポジウム 若手優秀講演表彰 2019年(指導学生:海野陽平)
双安定構造を用いた振動増強(内部応力制御)
振動発電デバイスは小型化に伴い高周波数化し、乾電池サイズでは十数Hzが発電の限界になります。双安定梁を圧縮して内部応力を導入し、飛び移り座屈(スナップスルー)を利用することで、圧縮量によってエネルギー障壁を連続的に調整できる構造を設計しました。3G・30ms(歩行相当)の入力に対し、飛び移り振動の応答時間を短縮し、小型デバイスでも低周波数対応を可能にしています。
・Sensors and Actuators A: Physical, Vol.408, 11800, 2026.
・Mechanical Engineering Journal, Vol.12, ID:25-00099, 2025.
・Sensors and Actuators A: Physical, Vol.378, 115750, 2024.
・日本機械学会 若手優秀講演表彰 2024年12月16日(指導学生:森下浩多)
【デモ】発電するプリント基板を用いたIoTセンサノード
振動発電・無線通信・省電力回路を1枚の基板に統合し、実環境で動作するIoTセンサノードとして実証しました。負のポアソン比構造を導入したメカニカルメタマテリアル基板に無線通信マイコン(Zigbee、LoRaWAN)を先端オモリとして搭載し、スリープ時電力を抑えた省電力回路をあわせて設計。重さ約2gのモジュールで通信ログを取得する実証実験に成功し、単位発電量5.8μW/gと他デバイスに比べ小サイズ・大発電量を達成しました。
・電気学会 優秀論文発表賞A 2026年4月1日(指導学生:吉原凜)
・電気学会第42回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム 奨励賞 2025年11月12日(指導学生:吉原凜)
・日本機械学会第12回マイクロ・ナノ工学シンポジウム 若手優秀講演表彰 2022年(指導学生:北澤幹人)
・溶接学会 第25回「エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術」シンポジウム 優秀ポスター賞 2019年(指導学生:海野陽平)
テーラーメイド医療のための単一細胞分析(動的マイクロアレイ)
単一細胞レベルの解析はテーラーメイド医療に不可欠ですが、従来手法は多数の細胞を一括捕捉した後、レーザーなどで1細胞ずつ回収するため時間がかかり、細胞への負荷も大きいという課題があります。楕円孔を隣接方向が直交するように配列したメタマテリアル構造のマイクロアレイを設計し、一軸方向の引張・除荷だけで、アレイ全体の孔を均一に変形させ、捕捉と回収を切り替える方式を提案しました。最小0.5mmの引張で孔径が1.5μm拡張し、サイズ差1.5μmの細胞を選択的に分離。均一径の細胞12万個を捕捉し、87%にあたる10.6万個を一括回収することに成功しています。
・Micromachines, Vol.14, 492, 2023.
・日本機械学会 若手優秀講演フェロー賞 2026年3月2日(指導学生:内海 剣)
・日本機械学会関東支部群馬ブロック 優秀発表賞 2025年12月17日(指導学生:内海剣)
・日本機械学会 第16回マイクロ・ナノ工学シンポジウム 優秀講演論文表彰 2025年12月15日(指導学生:内海剣)
・日本機械学会関東支部群馬ブロック 優秀発表賞 2022年(指導学生:佐野涼太)
・日本機械学会関東支部群馬ブロック 優秀発表賞 2021年(指導学生:佐野涼太)
バイオミメティクス(生物模倣)
「生物の知恵」を模倣する工学です。地球上で38億年にわたり、厳しい自然淘汰を経て磨き上げられてきた生物の構造、機能、製造システム。それらの優れた原理を深く分析し、画期的な新素材開発や次世代ものづくりに応用します。「生物学」が蓄積した膨大なデータに、最先端の「ナノテクノロジー」や「精密工学」を掛け合わせることで、従来の工業プロセスの限界を突破するブレイクスルーを創出します。形態・微細構造の模倣(ハスの葉の超撥水性、蚊の無痛注射針、モスアイの無反射構造など)、機能・プロセスの模倣、常温・常圧下で行われる生物のものづくりに倣うサステナブルなエコシステムという3つの視点で、以下のテーマに取り組んでいます。
臨場感を数値化するヒト聴覚模倣MEMS振動センサ
自動運転・遠隔運転が進む中、車内の「臨場感」を客観的に数値化する必要がありますが、音と振動は内耳(蝸牛)の働きと深く関係しているにもかかわらず、車両との関係は未解明でした。気導音と骨導音を同時計測できるセンサデバイスもこれまで提案されていません。
内耳(蝸牛)の模倣 - 音と振動を同時に取得するセンサ
二層のリンパ液に挟まれた基底膜の共振位置によって音の高低が選別される構造を、骨ラセン板と基底膜(圧電フィルム)からなる直方体形状にモデル化しました。多チャンネルの電極パターニングで共振位置を特定し、気導音・骨導音双方によるナノ振動を車内で計測できるMEMSセンサを開発しています。【デモ】自動車振動に対するセンサ応答
試作センサを用いて実車2台のテストコース走行データによる振動実験を行ったところ、センサ基底膜の出力は車種間で変化し、官能評価と相関する傾向を確認しました。「内耳指標」により車内をセンシングできる可能性が示されました。・自動車技術、Vol.80, No.1, pp.78-83, 2026.
・電気学会第41回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム 奨励賞 2024年(指導学生:伊藤陸)
蓮の葉に学ぶ表面濡れ性の制御
蓮の葉が水や汚れを弾く現象(ロータス効果)は、表面の微細な凹凸構造に空気が入り込み水を浮かせることに由来します。MEMS技術によりウェハサイズまで大面積化可能な任意形状の微細構造を作製し、テーパ形状によって広域かつ高精度に接触角を傾斜制御することで、接触角80°〜152°の範囲で親液・疎液性を作り分けることに成功しました。さまざまな形状を組み合わせ、動力なしで液体を一方向輸送するマイクロ流体デバイスへの応用などを検討しています。
・The 30th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences(µTAS 2026), 2026/10/18-22, Adelaide, Australia.(予定)
タコの吸盤に学ぶマイクロ吸盤による吸着力制御
タコの吸盤は漏斗部が相手材との密着性を高め、筋肉の収縮により負圧を生成して吸着力を高める構造を持ちます。生体パッチやソフトロボットの把持機構への応用が進む一方、幾何形状(側壁テーパ角)が吸着力に与える影響の検討は限定的でした。シリコンゴムの自己粘着性を利用した漏斗部と、逆テーパ円錐台形状の筋肉部からなる構造を提案し、テーパ角を連続制御しながら10mm角のアレイを一括形成する独自加工法を確立しました。特定のテーパ角で吸着力が最大となり、テーパ角によって吸着力を制御できることを実証しました。
・日本機械学会 若手優秀講演フェロー賞 2025年12月15日(指導学生:渡邊翔太)
機能性表面テクスチャ(表面・界面機能制御)
材料の「素材(化学組成)」を変えなくても、表面の「形(マイクロ・ナノの幾何学)」を少しクリエイティブに変えるだけで、熱、光、流体、化学反応のすべてを10倍、100倍の効率でコントロールできるようになる可能性があります。比表面積の爆発的増加や空間の圧倒的節約といった幾何学的効果、濡れ性の極大化やキャピラリ力といった界面現象の熱力学的制御、流体抵抗の低減や光学的散乱・閉じ込めといった動的・輸送現象への物理的干渉という3つの物理的効果を活用し、以下のテーマに取り組んでいます。
微小再帰性反射構造
コーナーキューブ型の再帰性反射構造は入射光をそのまま光源方向へ送り返す性質を持ちますが、演出を損なわずに小型化・個片化し、デザインによって自由に配置することは困難でした。プリズムアシスト3Dリソグラフィと3Dリソグラフィを組み合わせ、個片化した超小型光マーカ素子(微小再帰性反射材)を、二層堆積個片化鋳型により設計・作製。SU-8鋳型、PDMS反射材、PDMS鋳型、飴(食用)製反射材まで、多様な材料での再帰性反射構造の転写に成功し、暗室での角度別撮影評価により再帰性反射特性を確認しました。
・日本機械学会 第14回マイクロ・ナノ工学シンポジウム 優秀講演論文表彰 2023年11月22日(指導学生:陳 煜非)
摩擦帯電を用いた発電デバイス
摩擦発電デバイスは、帯電材料の接触による摩擦帯電と静電誘導により発電するもので、界面構造の形状や大きさ、入力荷重によって発電性能と相関のある帯電面積が変化します。3Dリソグラフィ法・プリズムアシスト3Dリソグラフィ法により、角度固定のテーパー形状(最大60°まで対応)を持つ鋳型を広範囲かつμmオーダーの精度で一括形成し、四角錐台・四角錐などの構造をアレイ状に配置したデバイスを検討。界面構造の付与により発電性能の制御が可能であることを確認し、靴のソールに装着するデバイスなど歩行発電への応用を検討しています。
・電気学会論文誌(E)、Vol.141, No.7, pp.254-259, 2021.
・Sensors and Materials, Vol.38, pp.2527-2539, 2019.
・日本機械学会 若手優秀講演表彰 2025年12月15日(指導学生:伊藤史弥)
・電気学会第37回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム 奨励賞 2020年(指導学生:柳田幸祐)
・Sensors and Materials Young Researcher Paper Award 2019 2020年(指導学生:飯田泰基)
・日本機械学会 若手優秀講演フェロー賞 2020年(指導学生:飯田泰基)
テーパー構造による微小流体チップの高速・低コスト製造
動物実験の廃止が国際的に進む中(欧州は化粧品で2013年に規制、米国は化学薬品評価の動物実験を2035年までに廃止予定)、代替ツールとして臓器チップ(MPS)の開発が必須となっています。従来のソフトリソグラフィは加工が容易な一方、疎水性低分子の収着や2〜3時間/チップという成形時間が課題。射出成形は数分で高透明・高耐久なチップを作れますが、金属鋳型の作製に時間とコストがかかります。3次元リソグラフィで作製した抜きテーパ付き樹脂鋳型を用いたインサート成型により、樹脂鋳型+射出成形を組み合わせた高速・低コストな成形プロセスを確立しました。モールド作製期間2〜4日、デバイス作製時間約15分を実現し、テーパを付けることでチップが50個以上成形できることを確認しています。
・日本機械学会関東支部群馬ブロック ビジネスフロンティア賞 2025年12月17日(指導学生:橋本大河)
・日本機械学会関東支部群馬ブロック 優秀発表賞 2023年(指導学生:大泉歩夢)
多材料対応マイクロ流体チップとMPS応用
微小流体技術を用いてヒト組織の機能を再構築する生体模倣システム(MPS)では、成形容易性からPDMS(シリコーンゴム)が広く使われますが、疎水性分子の収着など細胞実験への影響が課題となっています。PDMSに代わる材料としてCOP(シクロオレフィンポリマー)を用いたチップを試作し、等速電気泳動によるHeLa細胞Total RNAの分離性能や、細胞アレイでのガン細胞の機械的閉じ込め性能をPDMSと比較。あわせてPDMS、ガラス、PS、SU-8、Si、CYTOPなど多材料での細胞増殖曲線・ダブリングタイムを評価しました。COPチップは輝度値比較でPDMSに対し収着を90%低減し、目的に応じた多材料対応の作製技術を確立しています。
・RSC Advances, Vol.16, 11049-11060, 2026.
・Analyst, Vol.149, pp.5883-5893, 2024.
・Micromachines, Vol.11, 571, 2020.
・Micromachines, Vol.11, 54, 2020.
・Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, Vol.565, pp.188-194, 2019.
・Electronics and Communications in Japan, Vol.207, No.1, pp.55-61, 2019.
・Micromachines, Vol.9, 681, 2018.
・電気学会論文誌(E)、Vol.138, No.9, pp.435-440, 2018.
・Electronics and Communications in Japan, Vol.101, No.10, pp.45-50, 2018.
・電気学会論文誌(E)、Vol.138, No.5, pp.208-213, 2018.
・生産研究 , Vol.69, No.3, pp.137-140, 2017.
・Lab-on-a-Chip and Microfluidics World Congress 2018, Lab on a Chip Poster Prize(最優秀Poster賞) 2018年(指導学生:上野秀貴)
・ICMEMIS2017 Best Student Paper 2017年(指導学生:塚本拓野)
遠心力とテーパ構造による染色体伸張デバイス
遺伝子検査技術はがんや遺伝病の診断に利用されますが、DNAシーケンサは遺伝子情報の劣化、FISH法は解像度の低さが課題であり、多数サンプルの同時制御と操作の簡便性を両立する染色体伸張法の実現は困難でした。遠心力とテーパ構造を組み合わせ、糸毬状の染色体を細胞から抽出して直線状に伸長。テーパ構造によって多数の染色体を一括して同じ方向に伸張させることで、構造を用いない遠心法では向きにばらつきが生じ曲線的になっていた伸張染色体を、遠心力と同じ向きにまっすぐ伸ばせることを確認しました。
・日本機械学会 若手優秀講演フェロー賞 2025年12月15日(指導学生:小野寺志織)
・日本機械学会第11回マイクロ・ナノ工学シンポジウム 若手優秀講演表彰 2021年(指導学生:須賀海成)
・日本機械学会関東支部群馬ブロック 優秀ポスター発表賞 2018年(指導学生:田村隆大)



